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「こ、困ります。姉様……ほんの少しで良いのです、お食事をお取りになってください……」
「柚生が食べたら良い。私が食したように見せたらそれでいいだろう……良い物を使って作らせたのだろう?きっと美味いのでは無いのか?」
「私が食べては意味などございません。姉様、10日も何も召し上がっていらっしゃらないのです。このままでは飢え死んでしまいます。どうか、ほんの一口でも良いのです、どうかお召し上がりを」
柚生は目に涙を一杯に溜めて私へと懇願をしている。
私が死んでしまえばこの暗くて狭い部屋へと次に押し込められる可能性のあるのは妹だから必死なのだろう。
他人はいつだって自身の保身の為に私をこの暗くて狭い退屈な部屋へと押し込むのだ。
あぁ、なんて面倒なのだろう。
渋々と箸を手に取り、善の中を見渡して隅にあった豆の甘く煮られたものを一粒口へと運ぶ。
「……!」
あまりにも甘く豆は煮付けられており、数日食事を取っていなかった私には甘過ぎたのか料理人が甘く煮すぎたのかとにかくたった一粒だというのに口の中には吐き気がする程に甘みが広がって食欲なんて物は元より無かったとはいえ更に失せた。
とにかくこの口の中に余る甘みを流す為に茶を口に含んだ。
一口は食べたのだ。もう、いいだろう……。
「さあ、柚生。もう良いだろう?」
「しかし……!」
「柚生、お前が言うように一口は食した。何か他に文句があるのか?」
「……」
諦めたのか善を持って柚生は扉へと向かっていった。
扉の門番に向かっての合図だろう。
ゴンゴンと扉をたたくと少ししてあの重く太い扉が再びゆっくりとほんの少しだけ開いた。
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