物陰の小隊たち

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「今日から6番隊の新しい任務だ!今日はまず各自で手分けをしてエリアの偵察報告をしてくれ!」 「「了解!」」 全員が掛け声と同時に、それぞれの部屋へと戻っていった。俺たちも後に続いて、もとの部屋へ戻っていった。 二人入って、ドアを閉めたとたんに、先ほどの声の主が一喝した。 「ヒデアキ、もう少し早く起きなきゃこれから先辛いでしょ!起こす身にもなってよね」 「いやぁまさかこんなに熟睡できるとは思わなくてさ。」 「もう。」 この声の主の名前は、いすな。俺が《生前》に結ばれていた、いわば女房である。 生前、というのも、俺や6番隊の皆は、生きているのだが、生まれ変わっているのだ。 ここにいる連中は、もと生前に未練のあった浮遊霊の集まりで、どうやら神様が俺たちの未練を晴らすために結成させたらしい。 そして、驚くべきなのは、俺たちの身長はとても小さい。 生前、180cmあった俺の身長は1cm8mmほどになり、女房は1cm6mmほどになっている。俺と女房の背丈の縮尺は生前と変わらないが、ここまで小さいととても世界が広く感じるものだ。 俺と女房はともに80歳後半になって病死したらしく、死ぬ間際のことや生前のほとんどのことは覚えていない。ただ、愛人だということや、未練があることはわかっている。 …子供が欲しかったのだ。 「ヒデアキー。準備出来たら外出てよー。私、外出て待ってるからー。」 「おー。わかった。」 いすなはリュックサックを上下に揺らしながら外に出た。 ここにいる連中は全員20代ぐらいの姿になっていて、生前動きにくかった苦労はもう感じない。 難なく走れて、歯ブラシで自分の歯が磨ける。夢のようである。 すべての支度を終えると、俺は、昨日のうちにいろいろ準備したリュックサックを背負って、外へ出た。
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