タイムスリップ!?

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もう、こうなってしまうと現実として感じられない。 「どうかしたのかい?」 「夢…なのかな?」 突然、こんな所に連れてこられたなんて。 「え?」 「私、昨日…夜更かししちゃったから、二度寝しちゃってるのかな?」 理由もわからないので、だんだん焦りを感じてしまう。 「どうしたんだい?」 「そうよ!今江戸時代にいるのはきっと夢よ!!」 「しっかりするんだ!!」 ダンッ 男の人が肩を強くつかんで来て私を揺らした。 「いたっ…!!」 「あっ……すまない。君が混乱していたようだったから……」 「……………」 (痛い?どうして?ここは……夢の中じゃないの?ここは……現実世界…?) 「ここは君の夢の中じゃないんだよ。ちゃんと、文久四年の水無月の五日なんだ」 「……え?」 (文久四年六月五日?1864年だよね?) 文久だなんて年号、江戸時代にしか存在しない。 本当にここは江戸時代なのかもしれない。 その男性は、突然思いついたように質問をした。 「ええっと…。ああ、うっかりしていたね。まだ名前を聞いていなかったね」 「え?ああ、はい。……櫻です……。田所…櫻…」 「櫻さんか。私は木戸貫治」 「木戸…貫治……?」 (木戸貫治なんて名前の人、歴史上にいたっけ……。どこかの町人なのかな……?木戸……?) 何かが引っかかる。 町人の名前にしては、どこかで一度聞いたことのある名前だ。 貫治なんて…… 「あっ……!」 「?どうかしましたか?」 (思い出した。変名だ。おそらく……私の間違いではなかったら……) 「あの……木戸さん?少し耳を貸していただけませんか?」 「……?なんだい?」 木戸さんは、私の近くに来て耳を傾けた。 少し、小さめな声で言う。 「あの……あなたの名前。木戸貫治と言うものは変名ですよね?本当は“桂小五郎”ではありませんか?長州藩士の」 「!!」 そう言い終えると、木戸さんは急に私から距離をとった。 「櫻さん……あなたは一体…!!」 彼は焦っているような顔をした。 どうやら、桂小五郎本人で間違いないようだ。
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