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「待ってください、桂さん!私は全く怪しい者じゃありません!」
「じゃあ、なぜ私の名を!!」
「それは……」
(どう説明すればいいの?“学校で習いました”だなんて信じてもらえないよね?そもそも……私は未来から来ただなんて……)
「あっ……!!」
(未来……から…?ってことはやっぱり…)
もう、これは確信せざるを得ない。
「あの……もう一つ教えてもらっても良いですか?」
「君のような怪しい人には教えることは無いんだけどね」
「だから、怪しい人じゃありませんってば!今の天皇様は……孝明天皇ですか?」
「そうだが、なぜ今そのようなことを……」
(やっ…やっぱり…。平成の今上天皇じゃないんだ…)
「私……全てお話しします!!ですが…この場所では話せません」
私は、江戸時代に“タイムスリップ”したみたいだった。
(こんなこと、信じてもらえないかもしれないけれど…この場所では言えない。)
もし、本当に江戸時代ならば。
この場所での甘い香り、女の人の声からすると。
きっとここは甘味処なんだろう。
そんな所で簡単に話せる内容ではない。
「ならば、場所を変えるとしようか」
「はい…」
私は“未来から来た”と話すことに決めた。
このままこの人に逃げられたら、新撰組や浪士達に殺されちゃうかもしれない。
それに、今日は文久四年六月五日。
かの有名な事件の日。
あちらこちらに新撰組がいたって可笑しくない日だもの。
そういう時代。
人にすぐ刀を向けてくる。
特に、江戸時代の末期は……。
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