愛のカタチ

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____夜が明けた。 残された時間はあと一日。 三人で話をし、有る程度まで話を固めることはできた。 「俺は桂の周りにいる幕臣達を峰打ちする」 「絶対に殺しちゃダメですよ、土方さん!」 「血はなるべく流さねえようにするさ。俺も幕府の者だからな、一応」 「私は……」 「櫻ちゃんは昨日も言ったとおり、思い切り騒ぐの!!周りをざわつかせるくらいに」 「な、なんだか恥ずかしいなぁ~……なんて」 「恥ずかしがってる場合じゃないよ、櫻ちゃん!周りの人たちにも桂さんへの愛をわからせてあげなくちゃ」 「こ、梢ちゃん……」 宿屋で出された朝餉を食べながら、昨日話した作戦をもう一度見直す。 成功率は五分五分。 上手く行くのかわからない、不安な作戦。 でも私にはもうこの作戦しかない。 この二人を信じて、作戦を実行するしかなかった。 「櫻ちゃんが騒いでいたら、幕臣の誰かが私達を止めようとやってくると思うのよ。そこを土方さんが峰打……って聞いてるの土方さん!!」 「聞いている」 「呑気に沢庵なんか食べてる場合じゃ無いのよ?わかってます!?」 「俺だって、もしかしたら命を落とすかもしれねえんだ。好きなものぐらい食わせろ」 「命を落とすってねぇ……。よくそんな弱音を言って新撰組副長を続けられたわね……」 「うるせぇ、梢は黙ってろ。櫻が困ってるだろうが……っておい梢!」 「土方さんは沢庵禁止です!」 梢ちゃんは土方さんのお膳から沢庵を奪い、自分の分の沢庵と一緒に食べた。 ポリポリとワザと音を鳴らしながら食べる梢ちゃん。 「ってめぇ……梢!!」 「あは……あはは……」 この二人を見ていると、いつも喧嘩をしているような気がする。 でも、土方さんも梢ちゃんも楽しそうだ。 沖田さんが亡くなって、落ち込んでいる梢ちゃんをここまで立ち直らせたのは、きっと土方さんなんだと思った。 …………でも、お二人とも。 処刑日、明日なんですけれど。 そうやって騒いでいる場合じゃ無いんですけれど……
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