愛のカタチ

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「俺は、桂を助けるためにここに来たわけじゃねえよ」 「え?」 「…………俺が言えるのはここまでだ。……ったく、お前も泣くな。泣くなら桂を助けてからにしろ」 「土方さん……」 土方さんは私の頭に手を奥と…クシャッと髪を乱す。 せっかくハーフアップにした髪が乱れる。 私は押さえられた頭を押さえながら土方さんを見つめた。 「ご、ごめんね。本当に」 「ううん、大丈夫だよ」 梢ちゃんはすぐに戻ってきて、私達に詫びた。 戻ってきた梢ちゃんはいつも通りの梢ちゃんで。 さっきみたいに様子がおかしい様子は無かった。 「あ、櫻ちゃん。これ、羽織っておいたほうがいいよ。その身なりじゃあ目立ちそうだし……」 「あ、ありがとう梢ちゃん……」 私は梢ちゃんから鮮やかな青色の羽織を受けとる。 セーラー服の上から羽織をきるのは違和感を感じるけれど、この時代でのセーラー服はあまりにも目立ちすぎる。 私は羽織を着た。 洋服の柔らかさ、校則に反した膝上のスカート丈。 全てが懐かしい。 私が、未来人である証拠…… 「その着物、可愛いね。櫻ちゃんに良く似合ってる」 「そ、そう?ありがとう」 「私もそんな着物、着てみたいなぁ……」 「梢ちゃんにも似合うと思うよ」 「え?本当?」 「うん!」 何気ない日常会話をするけれど、本当に今日で運命が変わってしまうんだって思うと、なんだか悲しい。 小五郎さんは私が護ってみせる。 「さ、行こう。櫻ちゃん」 「うん」 黒服に狐のお面をかぶった男に、ポニーテールをなびかせる女子。 そして、珍妙な格好をする女子。 私達は走って処刑場へ向かう。 愛する人を、助けるために……
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