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とりあえず外に出ない事には何も始まらない
念のためにもう一度館内の気配を探ってはみたけど結果は変わらなかった。廊下を歩く途中咲夜とすれ違い、話を聞いてみるも答えはNO。やはり誰も分からないようだ
玄関を開けると強い日差しが飛び込み、軽く目が眩む
普段なら清々しい気分にでもなっていたのだろうが当然ながらそんな風にはならなかった
「………。」
……そして、門の上に見える人影。僕をよく知る彼女は長く艶やかな髪を風に晒しながら僕をどこか憂いを感じさせる目で見つめていた
「マリア……」
「何処に行くつもり?」
「ベルを探しに。」
「ダメ、まだ疲れてるわ。」
うん、やっぱり止めにくるよね。でも――
「疲れなんて関係無い。僕は行かなくちゃいけないんだ。」
「それでもダメ。」
「何で?」
「ベルがいなくなったのは貴方と関係無いじゃない。」
「関係あるよ。」
「私は前みたいに過ごせればいいの……その為に世界中を探し回って、回って、廻って……ッ!!」
わなわなとしている彼女からやり場の無い怒りを感じる。うん、マリアが此処まで来るのにどれだけ苦労したかはちゃんと知ってる。だけど
「ごめん。でも今それを実現したら此処のみんなに申し訳ないんだ。」
全ては僕が撒いた種。そして僕がいる事で芽吹き、華を咲かせようとしている
それだけは避けないと、なんとしても止めなければいけない……
「わからないわよ……何で優闇と同じ姿をした何かが敵になっているのか、どうしていつまでも帰ろうとしないのか……ねぇ、何か隠し事してるなら――」
「ごめん。」
「っ……ゆ……う…」
「……ありがとう。」
時空干渉型の瞬間移動による不意打ち。それによってぐらりと気を失っていく彼女の耳元で感謝の言葉を紡ぎ、腰に手を回して支えた
「……さて、」
「随分と手荒だな。」
「はぁ、出来れば見つかりたくなかったんだけどなぁ。」
まさかそのまま外に出てくるなんてね。さっきのアレがちょっと雑だったか
「俺の空間転移を可能にするペンダントが変な反応をしたんだよ。その上魔力は感じられないからまさか奴等が……と思ったが此処にいたのは貴様で、しかもこの光景ときた。」
……雑だったか
「説明ありがとう。じゃ、マリアをよろしく。」
「……待て。」
……だよね
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