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「僕は、人間でありたい。」
此方から顔を逸らしていた優闇の目が、金色に輝く瞳が、力強さを感じさせる声と共に真っ直ぐ俺を見つめた
「確かに僕は破壊を求める獣かもしれない。誰かを不幸にするだけの存在かもしれない。それは自分がやってきた事を振り返れば嫌でも自覚させられる。僕自身よくわかってる。……でもね、それでも僕は“人間”でありたいんだ。」
「なら何故、貴様を人間から離れさせる“いらない”力を捨てずに振るう。何故貴様が行こうとする。」
「そうだね、誰にでも出来るなら任せてたさ。でもこれは僕自身の問題で、僕にしか解決出来ない問題だ。だから僕は行く。どんなことでもやる。この忌々しい力を使う事になっても……例え“世界”が否定しても。」
「…………。」
「僕は自分が正しいと思った事をするだけ。それが間違いって事もあるけどね。」
「矛盾しているな。」
「そう、僕は矛盾しているんだよ。力を捨てたい反面、力で誰かを助けたい。マリアと同じ時を生きたいと思う反面、ベルと永遠を過ごしたい。なんてね。」
おまけに優柔不断と来たか。道理で、こいつには不幸が並ぶ訳だ
「でも、その矛盾を解決する方法が見つかったかもしれないんだ。」
「矛盾を矛盾無く成立させると?」
「うん。少なくとも僕の中で出した結論はこれだよ。“無いのであれば創ればいい”そうすれば、僕の矛盾に“境界”を生み出してくれる筈さ。」
「肝心な所はぼかすんだな。……まぁいい。呆れたよ、お前には。」
胸ぐらを掴む拳も、いつの間にか緩んでいた
「そうやってお前は何もかも掴み取るんだろう。欲張りだな。強欲さは人間である証拠だ。さぁ行け。此処に被害を出さないのなら、俺の大切な人達に何も起こらないのなら勝手にしろ。」
「フォン………」
「……ただし、お前も帰って来い。それだけだ。」
「……ありがとう。」
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