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「…ア…シア?」 「んっ…く…」 不意に掛けられた声に上を向くと、太陽を背にした男の子、李玖が立っていた。 両手一杯に何かが入った紙袋を抱え、心配そうな表情で私を見つめている。 「大丈夫?具合悪いのなら、先生呼ぼうか?」 「大丈夫っ…なんでもないから…」 「泣く程なのに、大丈夫なわけがないよ」 「……え」 泣いてる自覚はなかった、でも私は泣いていた。 まるであの声の主の代わりであるかのように、涙が流れていた。 事情が分からない李玖は困った顔で紙袋を漁りだす。私はまだ頭痛がするものの無理をして立ち上がった。 「はい、これあげる」 「…これは?」 「シア、どうせ医務室行かないんでしょ?自分が作ったんだ、よかったら食べて。元気になるよ」 笑顔で私に手渡したそれは、月の形をしたパンだった。 それを受け取り静かに涙を拭く、もう頭痛も耳鳴りも止んでいた。 「有難う、李玖。ゴメンね、心配かけて。」 「いいや、謝らないでいいよ。代わりに、後でパンの感想聞かせて?」 「うん、勿論」 頷くと李玖は校舎に向かいながら手を振った。
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