memory1

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「スピカ様。中に入りますの。付き合うだけ時間の無駄ですわ」  花梨が、扉を開いてスピカの腕を引っ張る。  スピカは名前も知らない商社マンを一瞥してから花梨に引っ張られるまま豪邸に入った。 「待って。待て、待て。一台くらい欲しいだろ。これだけの大きな家なんだから」 「知りませんわ。警察を呼びますわよ」 「そいつは困る。いや、金は有り余ってるだろ。そうでないといたいけな老人を騙して売らないといけなくなる。こっちも大変なんだ」  商社マンがごちゃごちゃ言う中で、花梨が扉を閉めた。  乙女は呆然としたものの花梨に案内されて奥の部屋に入る。  お茶を手際よく用意した花梨が、スピカに向かうように座った。 「それで、御相談というのは?」  乙女が切り出すと花梨が溜息を吐く。 「さっきの鈴木さんですわ。追い払っても追い払っても来ますの」 「脅迫行為はいけません。警察に御相談しましょう」 「警察は事件が起きなければ動いてくれませんわ」 「なるほど。ほとんど嫌がらせですね」 「怖いですわ」  花梨が、身を震わせた。
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