memory1

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「知り合いにその分野が居ます。掛け合ってみます」  乙女が案内されたリビングは、オープンキッチンに繋がる。  フローリングの床に天井の照明、水槽の中では金魚が泳ぐ。  二人きりは少し広い間取りの部屋であった。 「彼は捕まえてやりましょう。ストーカや脅しは犯罪ですの」  花梨が拳を握った。 「花梨さんが危険に脅かされるなら僕も頑張ります」 「ありがとうございますですの」  花梨が微笑む。 「でも、鈴木さんは純粋に売りに来ているだけの気もしますが」 「鈴木さんはどうでもいいですの。スピカ様、お風呂どうぞですの。そうしたら傷の手当を致しますわ」  花梨が、風呂の準備をしてくれる間、スピカは金魚に餌をやった。三匹の金魚は尻尾を揺らして餌に食いつく。ひとつひとつに名前が付いているそうだが、みな同じ種類なので見分けが付かない。紅い尾鰭をゆらゆら動かしているのをぼんやり眺めていると花梨が戻ってきた。  乙女が風呂を借りて戻ると花梨もまた風呂へ向かった。  ひとりになった乙女が窓から外を覗く。流石に商社マンの鈴木は姿を消していた。  その日は、花梨の部屋に泊まり、そのまま会社に向かう。
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