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下総駅の駐車場に黒塗りの高級車が止まり、美野里が出てきて飛鳥を呼んだ。
飛鳥と美野里が買い物に出かけると乙女は車に乗り込む。
「どちらまで?」
運転手の蒜が言った。被った帽子から白髪が覗いている。
「海が見える方向へお願いします」
乙女が答えると蒜は、車を出した。
車の中で乙女は昨晩のことを話して聞かせる。
すると蒜は、バックミラー越しに頷いた。
「ならば、川崎殿と出羽殿にその鈴木という商社マンを洗わせましょう。彼等は探偵業を営んでおりますので問題ないと思います」
「しかし、探偵業も今では警察に目を付けられているそうですね。ニュースでやっていました」
「なに。マスコミも同じことをしております。表沙汰にならないだけですよ」
蒜は、ライン海峡が見える橋まで車を移動させた。
橋は大きく長い。開通して五十年になる。
「では、手配をお願いします。僕は顧客からの取り立てで忙しいので花梨さんの側に居られないんです」
「分かっておりますよ。ところで、ソラ殿のことですが、また、厄介ごとに巻き込まれてはおりませんかな?」
蒜に問われて乙女は壊れた眼鏡を気にした。蒜はソラの兄が巻き込まれた事故を知っている唯一の人物であった。美野里を保育園に送る最中に、ソラの兄である光が殺害された現場を通ったのだ。実際に死体を発見したわけではなかったが、その頃から気にかけてくれている。
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