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 夜八時。  ソラは精神心療科病院にある駐車場いた。安い革のジャケットとズボン。春の都会には少し厚着であった。  細い月が空に見える。駐車場は夜間のためか車が少ない。見渡す限りがらんとしていて殺風景であった。  ソラは、母親のエリサが居る病棟を眺めた。エリサは、父親が女を作って逃げたあとソラの双子の兄であった光を失い壊れてしまったのだ。  幸い、父親の知り合いにユーリという大富豪が居たお陰で、なんとか病院に入れたのだが、その容態は日に日に悪くなるばかりであった。 「見付けました。今日こそ借金を返して頂けませんでしょうか?」  駐車場に借金取りの栃乙女(トチ スピカ)がやってくる。  今時の流行りきらきらネームだ。会社では[とちおとめ]と呼ばせているらしい。  会社採用にあぶれた末路だと聞いている。
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