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「何の用事?」
ソラは、駐車場の歩行者通路で立ち止まる。
「勿論、お金の取り立てです」
乙女は、背筋を伸ばして言った。
「無いよ。帰れ」
ソラは乙女の言葉を受け流す。
「いえ、利子分だけでも貰って帰ります」
乙女は動かない。
「まるい顔して、まるい眼鏡かけて、まるい性格なのにめんどくさい奴」
「仕事なんです。お願いします。返してください」
「絶対向かないよな。この仕事」
ソラは、乙女に近寄った。相手の胸倉を掴むことだけはなんとか思い止まる。
「でも、仕事です。お金返してください。そうでないと僕は花梨さんと結婚できません」
「知らないよ。借金取りが、誰と約束していようが俺には関係ないの」
「そこをなんとか」
乙女が食いついてくるのでソラは面倒だった。
「退けよ」
「退きません」
乙女は退かない。ソラは乙女を突き飛ばした。
「一発当てたら返してやるよ。一生、無理だろうけど」
尻餅を付いた乙女を一瞥して、ソラは駐車場を出ようとした。
「一生はありません。僕は花梨さんと結婚するんです」
乙女が負けじと言ってくる。
「メイドのどこがいいの?」
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