花一匁(ハナイチモンメ)

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いつも以上に髪が見えなくなっている姿を見て(自分はしたくないな、だって重そうだもの)と梅若は思った。 「さて、帯も頼むよ。」 「はい、はい。」 赤や金を基調とした眩しいほど艶やかな物を表にし下に何枚かの帯を巻く。 梅若はすっかり慣れた手つきで結んでいく。 菊弥は物悲し気に、相変わらず優しい瞳で見ていた。 結び終わると少年は疲れたそぶりで寝転がり手足を伸ばしてあくびをした。 「ほら、ウメ、しっかりなさい。お前はこれから仕事の手伝いをしなくてはならないんだ。」 男は更に豪華な羽織りを肩が見えるように羽織り、少し屈んで少年に手を差し出した。 「分かってますよ。」 ふてくされた様子で起き上がると菊弥と一緒に別の部屋に向かった。 梅若は部屋の前に着くと作法に気を付けながら襖を開け菊弥が入ると襖を閉めた。 最近は仕事を覚える為にずっと部屋の前に待機させられている。 (あこも、もう後二年、いやもう二年もないな。) 陰間茶屋は一般的に下は十三、上は十八くらいの美少年達が働いている。 女装をしたり、しなかったりは店によって違う。
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