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三助はつまらなそうな顔をしつつ口を閉じた。
「さぁ、ウメ、また部屋の前で待ってな。」
「はい。」
菊弥は三助には甘えたがる。
だから三助が来た時は少々梅若に冷たくなる。梅若にとってそれが嫌だった。
歳は兄弟でも不思議でないくらいしか離れてはいないが、少年にとって菊弥という男は親のような存在だ。
襖を閉めるとすぐに聞き耳を立てて二人の会話を盗み聞く。
それは駆け落ちを防ぐためでもあるが単に恋愛とやらに興味があった。
「にしても、梅坊ももう時期店に出るようになるのか。」
「あぁ、あと二年かそこいらだろう。」
大概、梅若が部屋から出ると三助が梅若の話しをし出す。どうやら弟のような感覚らしい。
「三助。私はあと一年で裏方に回らねばならないんだ。貴方に会えなくなってしまう。だから三助」
「菊弥。契りを交わすのはここを出てからと約束しただろう。」
「そうだが」
男は言いかけた言葉を飲み込んだ。少年はただそれがなぜだか分からなかった。
自分ならはっきり物を言ってしまうからである。
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