翡翠の君

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「席は自由でかまいませんが… そうですね、とりあえず奥村くんの 後ろの席に座ってもらえますか」 「おー よろしくな」 「……お…く…むら……?」 雪男に頷きかけてララは息を呑む。 「(奥村ってもしかして……!) はたと思い当たり、手をひらひらと振る燐と 隣に立つ雪男を交互に見る。 どことなく、面影がある…。 それに″奥村″で私が知ってるのは あの2人だけ。 「? 天音さん?」 突然固まってしまったララを不思議そうに 雪男が覗き込む。 「ゆ…き……と、…り…ん?」 すると恐る恐るといった感じでララが 小さく呟いた。 「「え?」」 今度は燐と雪男が固まる番だった。 「ゆき!?……しりあい?」 「兄さんこそ…」 「………  お忘れですか…?」 驚いて思わず顔を見合わせる2人だが ララの悲しげな声音に慌てはじめる。 「おっ おわすれ?おわすれじゃねーよ!! 覚えてるってモチロン」 「兄さん…。適当なこと言わないの。 余計に傷つけるだけだ。 …ええと、1人心当たりがあるんですが、 記憶にある人と合わないというか…」 後半はララに言った台詞である。 申し訳なさそうに話す雪男にララは そうですか…、と返しながらあることに 気づいた。 「ああ 失念しておりました。           ・・・ たしかにこのままではあの頃と 違いますもの。 では――――」 『!?』 全員が見守る前でララは優雅な動作で 自らの髪に手をかけた。 そして。 ―――パサ…  
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