翡翠の君

6/10
前へ
/38ページ
次へ
「皆さま、改めまして…  これが本当の私です」 先程までの黒髪が外され、サラサラと こぼれ落ちるエメラルドグリーンの髪。 その珍しい髪は彼女の愛らしさに いっそう磨きをかけた。 どこか神々しくもあるその姿に皆が一様に 頬を染めている。 「きれい…」 燐の横に座る、柔らかい色の髪に着物を 着た少女、しえみがため息とともに うっとりと呟いた。 ぼーっとこちらを見ている訓練生たちに 不思議そうに首を傾げてララが続ける。 「この髪だと少し目立つので、ウィッグを。 ですがここに来た今、もう必要ありません。 それで、…思い出されました?燐、雪」 「ああっ!! それ!その話し方…ッ!! お前ララだろ?昔よくうちに来てた!!」 悪い、全然気づかなかった」 「はぁ…。相変わらずですね。 でも、素直で結構」 ララが頬を膨らませてじとっと2人を 見やると、バツが悪そうに笑ってから 燐が答えた。 それにララは大きくため息をつくが しかしどこか嬉しそうだ。 それから雪男に視線を移す。 「あなたは?雪」 「ははは… 久しぶりだね」 言外に「この期に及んでまだ違うとか 言わないでしょうね?」と含ませつつ、 一歩近づいて見上げると、雪男もまた バツが悪そうに頬を掻いて答えた。 そんな2人に満足したのかララは 満面の笑みを送る。 「お久しぶりです」 燐と雪男もまた、嬉しそうに笑った。 「燐と雪ちゃんの…お友達?」 「ん? ああ 昔よく3人で遊んだんだよ。 そーいやスゲー泣き虫だったよなお前」 「いつの話をしているんです。 もう10年ほど前ですのに。 燐は…昔から喧嘩っ早いですよね。 たしか雪と一度、本気でケンカしたことも ありましたし。 理由は何でしたの?お菓子?おもちゃ?」 「ばっ…それはお前を…」 「? 私が何か?」 ――パンパン 何気ないしえみの問いかけから始まった 会話が思わぬ方向へ流れそうになった ところで雪男が手を叩いた。 「3人ともそこまで。続きは休み時間に してくださいね」 「ごめんなさい、雪」 「いえいえ」 ララが離れたのを確認すると燐が天の助け とでも言わんばかりに雪男を拝む。 「(雪男! 助かった!!)」 「(まったく…。余計なこと言わないでよ。 僕まで巻き添えくうだろ)」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加