翡翠の君

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席に戻るとしえみが不思議そうに たずねてくる。 「雪ちゃんと何のお話してたの?」 「そうですね…燐に出す課題の 量について少し」 さすがに本当のことを言うわけには いかないので、おどけてそう答えた。 すかさず燐が食いつく。 「なんだよ それ!!」 「雪が燐のために特別に課題を出して くれるそうですよ。たっぷりと」 「うげ」 とたんに真っ青になる燐に不憫に思った ララは心の中でそっと謝った。 (あとでちゃんと話すから…) 「そ そーいうお前はテスト どーだったんだよ」 「? 私ですか? 燐は見ない方がよろしいかと……あっ」 ララの台詞を遮って燐がララの手から テストを奪った。 「うはっ!? お前0点じゃん!! 俺よりやべーんじゃねーの!? あはははは!!」 「……」 「燐、ねぇ燐」 「なんだよ?」 「手、どかしてみて」 腹を抱えて笑う燐の肩をたたき、 テスト用紙にそえてある手を どけるように言うしえみ。 燐はしえみの意図がわからず、首を 傾げながら…異変に気づいた。 「ん? …あれ 0がもう1個ある……? ――――!!!」 「もう だから申しましたのに…」 次の瞬間、燐の声が教室中に響いた のだった。 「ひゃ、ひゃひゃくてん―――っ!!?」 「すごいよ ララ!」 「いえ… 運がよかっただけです」 「お前天才かよ…!いつのまに 「奥村くん」……」 また燐の声が大きくなりだしたところで 雪男の咎めるような声が遮る。 ようやく燐は口をつぐんだ。 それでは気を取り直して。 「勝呂くん」 ガタッ 「はい!」 勝呂の名が呼ばれ、威勢よく返事をすると すれ違いざまに威圧的に燐を睨みつける。 「ざまあないな。2点とか狙っても ようとれんわ。 女とチャラチャラしとるからや ムナクソ悪い…!」 「は!?」 な…なななんだ あのトサカ…! チャラいのはてめーだろ… どう見ても普通とは言い難い見た目の 勝呂に言われたのが納得いかず、心の中で 悪態をつく燐。 どうせ自分とそう変わらないだろう。 どこかでそう思っていた。 だがしかし。 燐の淡い期待は雪男の言葉と共に あっけなく崩れさる。 「よく頑張りましたね 勝呂くん」 「ククク…」 ドンと勝呂が燐の眼前に掲げたテストの 点数は98点。 当然の如く燐は激しくうろたえた。 な…ん…だと!?  
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