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今度はララが動きを止め、愕然として獅郎を
見つめる。
「つくられた…?
わたし、にんげんじゃ、ないの…?」
本当は頭のどこかでわかっていた。
だが認めたくなかった。
燐や雪男、獅郎そして院長先生。大好きな
人達と自分は相容れない存在なのだと
いうことを。
どんなに、どんなに一緒にいたいと願っても
もうここにはいられない。
「わたし…またひとりになっちゃった…っ」
「ララ…」
両手で顔を覆い、その場に泣き崩れるララを
獅郎が力強く抱きしめる。
「お前はひとりじゃない。
俺達はずっと友達だ。
もちろん、燐と雪男もな」
そう言って大きな手で優しく頭を撫でて
くれる獅郎。
ララは頷くと涙を拭いて獅郎を見つめた。
「…わたしは、どこにいけばいい?」
「日本を出る。ヴァチカンに知り合いが
いてな そこに匿ってもらうんだ。
ここよりずっと強力な守りが施してある」
「うん わかった」
ララの返事を聞くと、獅郎は懐から
何かを取り出し、小さな掌に"それ"を
乗せた。
「これは?」
「"降魔剣"……
またの名を"イデア"という魔剣だ」
ララは掌に乗せられたものをまじまじと
見る。
それは月明かりを受けて白く輝く腕輪だった。
「……」
ララは腕輪と獅郎を交互に見る。
何か言いたげなその様子に獅郎は
ひとつ咳払いをすると続けた。
「それはな、使用者にあわせて形を変える。
今は使わないから装備しやすいように
腕輪になってるんだよ。
…俺がおかしくなったんじゃないからな」
「ふふ わかってる」
やっと笑顔を見せたララを見て心の中で
安堵すると獅郎は表情を引き締める。
「この剣(イデア)に
お前のあらゆる力を
封印してある
抜けば力が解放され、
二度と人間としては
生きられないだろう
絶対に抜くな!…と言いたいところだが……」
そこで一度切ると言いにくそうに視線を
落とした。
「しろう」
獅郎が強く唇を噛みしめているのを見て
ララは諭すようにそっとその名を呼ぶ。
まるで私は大丈夫だよ、とそう言うように。
「…炎(ちから)を解放しなければ
魔神(サタン)からは逃れられない
お前の炎が奴から身を隠す唯一の手だ」
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