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「…これがあの日私に起こったことの全て」
話し終えるとララは2人の手を放した。
「ララが…人間じゃない……」
燐が自分に言い聞かせるように反芻する。
「創られたって…」
信じられないというように口を開いたのは
雪男だ。
「うーん それに関してはまだ
よくわからないの。
あっちで正体隠して学んでたけど、
正十字騎士團の機密に関わる文書なんかは
見れなかったし…
たぶん悪魔じゃないかな?」
「悪魔じゃないかな?って適当だなお前」
「わからないんだからしょうがない
でしょう?
私は私が何なのか知るためにここに来たの」
なんだかゆるいララの台詞に燐が呆れた
声を出し、それにララが開き直って答えた。
「でもどうしてサタンはララさんを
連れて行こうとしたんだ…?」
「それについてもわからないわ。
…ただ」
「ただ?」
雪男の問いに少し間をおくと、ララは
視線を落とす。
「………。
私がヴァチカンに離脱したあと、サタンが
院長先生に憑依して言ったそうよ。
"セレネ、お前を必ず手に入れる。
必ず迎えに行く" …ってね」
「? セレネ?だれだそれ?」
「兄さん…」
間の抜けた声を出した燐に雪男がこめかみを
おさえて深い溜め息をついた。
そんな雪男の態度が気に入らない燐は
もちろん抗議をする。
「な なんだよ!溜め息つくな!!」
「話の流れでわかるでしょ。
セレネっていうのはララさんのことだよ」
「ふふ そういうこと。
今のところ手がかりはこれだけなの」
「ん…? セレネってもしかして……
いや、でもまさか…」
「さすが雪。 気づいた?」
ララの言葉に何か思い当たることが
あるようで、驚きに目を見開く雪男に
ララが感心しながら微笑んだ。
一方、燐は話に全くついていけない。
「お前ら2人で納得してねーで
俺にも説明しろ!」
「兄さん 僕が渡した教材本当に
目を通したの?
セレネって言うのは、月の女神の名前だよ」
《月の女神セレネ》
冷徹な純潔をもつ
夜天を統べる聖なる女王
夜の世界の監視者
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