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神社から歩き始めて数分した頃、俺達は霧の出ている湖に来ていた。
「けっこう深い霧だな……」
「ここは、何時もこうだよ。私の教え子の氷精──まぁ、氷の妖精だな──が一人ここに居てな、周りの空気が冷えてこうなるのさ」
「なるほどな」
氷精、か。妖精もいるのか、幻想郷……妖怪だけじゃ無いんだな……
「そこのやつ!かってにあたいのなわばりに入るなぁ!凍符『パーフェクトフリーズ』!」
「んな!?」
いきなりスペカだと!?
「この弾幕は……すぐにスペカを消すんだ、チルノ!!」
「げ、先生!?」
「いきなり弾幕を撃つなとあれほど言ったのに……反省が足りないようだな?」
「だ、だってこの霧でよく見えなくて…」
「なら、言葉で警告をすればいいと思うが?」
「う…」
「少し反省しなさい。今度やったら…」
慧音がそう言ったとたんにビクッと震えるチルノ。
「わ、わかったから!それは止めて!!」
チルノが相当な怖がりようなんだが……一体、何をしようと?
「なら、しっかりと反省する事だ。いいな?」
「はーい…」
チルノが離れて行くと、慧音が苦笑しながらくるりとこちらを向く。
「済まないな、私の教え子のせいで。怪我は無いか?」
「ああ、大丈夫だ。
それより、チルノに何をしようとしたんだ?あの怖がり方は尋常じゃないが」
氷精、という事だし、お湯をかけるとかだろうか。殺される直前ですと言わんばかりに怖がっていたが…
「ああ、それは…
頭突き、だ。」
……は?
「頭突き?」
「そうだ。私はけっこうな石頭でな、かなり痛いぞ?
なんなら、試してみるか?」
「……いや、遠慮する。
後遺症とかが残ると嫌だしな」
と笑いながら言うと、慧音も笑いながら、
「まぁ、元々人間にはやる気は無いさ。
昔やった人間はみんな気絶してしまったからな。教師をやっている以上、そんな事をするわけにはいかないからな」
と言った。それを聞いた俺は、
「………」
冷や汗が止まらなかった。
妖忌爺の殺気とは方向性は違くとも、同レベルの恐ろしさと言うか、プレッシャーのようなものを感じた。
もしかしたら、後遺症とかは冗談じゃ無くなるかも知れない……
下手したら頭蓋骨陥没とか……それはさすがに無いだろうか?
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