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ブンッブンッ
と、夏の早朝のとある山に棒を振る風切り音が響く。
その棒を振っているのは一人の青年。そう、あの日老人に、魂魄妖忌に拾われた子供である。あれから18年がたち、今は18歳。高校三年だ。
?
「ふぅ……日課の素振り5000本、終わりだな。さて、先ずは食料でも探しに行くか」
何故、この少年が普通ならば大学進学、或いは就職先をさがすのが殆どのはずの高校三年になってもこんなことをしているのか。
その理由を上げるならば妖忌の言いつけであることと、体に染みついていて自然にしてしまう事だろう。
しかし何故、剣道場等ではなく山でしているのか。それは、自分の使う剣術――魂魄流は剣道のような『型にはまった』剣術ではなく、実戦向け……対人、対獣まで対応出来るものであり、幼い頃から魂魄流の鍛錬をしたのが山で、剣道場だと落ち着かないという理由からである。また、この山には長期休暇の度に来ており、育った山にあった道具を再現したものがあるので、鍛錬にはちょうどいいのだ。
そんな青年は、今は山ではなく町に住んでいる。
妖忌がどこかに旅に出てしまい、この青年はどこからか妖忌が用意した金を元に町で一人暮らしをしているのだ。
小学校、中学校のころこそ山にあった小さな家に妖忌と住んでいたのだが、高校に上がる時に
「お前も、もういい大人だ。この時代、こんな山にずっと住んでいる訳にもいかなくなるだろう。
金は用意しておいた、これからはお前一人で町に住め。
私は旅に出る。探そうと、ましてや追いかけようとなどするなよ?
後、私が居なくなっても鍛練はしっかりとすること。」
と、唐突に言われた。いきなり何なのかとは思ったが、今まで妖忌爺から言われた事をして悪い事が起こった事は無いので、金を受け取り、おとなしく荷物をまとめて山を出た。
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