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だが、ずっと町に居ると妖忌との生活でやって来たことが色々と出来ないので、休みの日になっては住んでいた山に環境を似せたここに来てサバイバルをしているのである。
「よし……よろしくな、相棒」
少年がそう言って腰の後ろに手を回して手に取ったのは、鞘、刃など全てにおいて純白に染まった一振りの短刀。その短刀の名は、
「さて、食い物を探しに行くぞ、『白桜剣』。」
この短刀は、妖忌が魂魄流免許皆伝の証として青年に渡した物で、色々と不思議な代物だ。
そんな短刀の具合を確かめた後でベルトに挟んだ鞘に納め、青年が食料を求めて歩き出そうとして足を前に一歩踏み込んだその時。
「……ん?足元の感覚が無あぁぁぁぁぁ!?」
先程まで存在しなかったはずの、足元に現れた穴に落ちた。
突然の浮遊感や、黒い背景に目玉が幾つも存在しているという不可思議かつ悪趣味と言わざるを得ない空間に驚きながら、しかし青年は首を傾げた。
それは、初見であるにも関わらず、既知であるような感覚だ。
「……もしかして、スキマってやつか?妖忌爺がよく話してた……特徴はピッタリ合うし、多分当たりだな」
妖忌は酒を飲み、酔っぱらう度に毎回同じ話をした。
かつて、白玉楼と言う美しい桜の立ち並ぶ屋敷の庭師だった事、そこの娘で自らの主だった少女の事、その主のたった一人の親友の妖怪の事。そして、庭師の仕事を孫に引き継ぎ、その妖怪の力でこの世界に来たと言う事。
小さい頃から聞かされてきたので、覚えていたのだろう。
最も、ここ三年間聞かなかったので忘れかけていたが。
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