幻想入り

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「取り敢えず、これがスキマなら出口は恐らく幻想郷のどこかだろうしな…… せっかくの機会だ、白玉楼に行きたい所だな」 妖忌が言うには、今は妖忌の孫であり青年の姪という事になる魂魄 妖夢が庭師兼剣術指南役(と言う名の召使い)を受け継いでいるとの事だし、妖忌以外では知っている限りでは唯一の同門と言う事もあって手合わせもしてみたい。 何より、妖忌が仕えていた家、主に会ってみたいと思っていた。 「ん、そろそろ出口か? 幻想郷、どんな所なのやら……楽しみだ」 黒い空間の中、下に光が見えてきていた。どういう理屈かは分からないが落下速度も減速しており、もうじき出口と言うことだろうと考える。 光が広がっていくにつれ、草村のものであろう緑色が見えてきた。そして、数秒後…青年は、ふわりと緑の中に着地した。 青年は辺りを見回し、 「ここは……道端の草村、か。どっちに行けばいいんだ?」 そう言って首を傾げた。 「ふむ……少し出るのが早かっただろうか?」 腰の下に届く程の豊かな銀の髪、青を基調とし、裾にフリルをあしらったワンピース、どこか建物のように感じさせるデザインの帽子を頭に乗せた女性……上白沢 慧音は、一人で歩きながら呟いた。 親しい友人である藤原 妹紅の家に遊びに行く予定であった慧音は妹紅の家がある『迷いの竹林』に向かっていたのだが、楽しみな気持ちが先走ってしまったのか、約束の時間よりもかなり早く着いてしまうような時間に出てしまった事に気付き、そしてそれ故の先の呟きだった。 そんな時。 ふと慧音が顔を道端に向けると、そこに幻想郷の賢者たるスキマ妖怪、八雲 紫が作り出すスキマが現れ、そこから一人の青年が出て来るのが目に入った。 見たところ人間だが、幻想郷において普通の人間が唯一住むことが出来、慧音が住んでいる所でもある人里では見たことがない顔。 「(外来人、だろうか?)」 恐らく間違い無いだろうとは思うが確認の意味を込めて、慧音はキョロキョロと見回している青年に声を掛けた。 「君は、外来人か?」
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