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「君は、外来人か?」
道を歩いて来たらしい女性が、此方を向いてそう問い掛けた。『外来人』という言葉は妖忌爺から聞いた事がないが、恐らくは幻想郷の外から幻想郷(ここ)に来た人間の事だろうとあたりをつける。
「多分、そうだと思うが……ここは、幻想郷で合ってるのか?」
「あぁ、合っている。だが、幻想郷についてどこで知ったんだ?外界では幻想郷の事なんて知ることはそうそう無いだろう?」
「ん、まぁ普通はそうだろうけどな。
ほら、これ」
ほら、と言って、何時もは自分の体に容れるようにしていた自らの半身──半霊を解放して、自分のそばに浮遊させる。
「あー……やっぱ、外に出してた方が何というか、すっきりするな。
流石に、もうしまう事に慣れてはいるけども」
「な……まさかお前、半人半霊なのか?」
「ああ、妖忌爺が言うには半人半霊らしい。幻想郷の他の住人もそう言うなら、間違い無いだろうな」
「妖忌爺?まさか、魂魄妖忌殿の事か?
いや、ちょっと待て、お前は外来人だろう?何故彼の事を知っているんだ?」
いや、何故と言われても……
「俺の、育ての親だしな」
「育ての……?それは、つまり」
彼女がそこまで言った時。
彼女の後ろ10m程、向かいの草村の中に、黒っぽい毛皮の獣が伏せているのが目に入った。
ちらりと見える、獰猛な光を放つ目。
犬科の動物と思われる体つき、毛皮の色を見るに、恐らくは狼。
それが此方を向いて、身を隠すように伏せていると言うことは───っ!!
「危ねぇっ!!」
考えがそこまで至った瞬間、俺は彼女を横に押し倒すようにして倒れ込んだ。それと同時、黒い影が先程までの場所を駆けて行った。
ギリギリだったな……
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