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「大丈夫か?」
そう言って、狼の様子が見えるようにして白桜剣の柄に手を伸ばしながら、彼女の上に覆い被さるようになっている状態から体をどける。
「あ、あぁ……それより、早く逃げるんだ!あいつは私が――」
「大丈夫だ、任せろ」
あの程度なら十分対処出来ると判断し、柄と鞘をそれぞれの手で握り込み、
「『伸びろ』」
呼びかけるようにして言うと、白桜剣に異変が起こる。
小太刀ほどであった白桜剣が、鞘を含めて普通の刀と同じような長さになったのだ。
「なっ!?その刀は、いったい…!?」
直後、狼が今度は仕留めんとばかりに牙を剥きだしにし、飛びかかって来た。
「我流居合い一ノ型……」
ガアアァァァァァァァッッッ!!
咆えながら、飛びかかって来る狼。しかし、慌てもせずにそれを見据えてタイミングを合わせ、牙が届く直前に、
「『閃光』ッ!!」
純白の光が、その狼(エモノ)を切り裂いた。
「ふう……ま、こんなもんだろ」
「お前は……本当に外の人間か?
外来人は大概、幻想郷の者に助けられるか運が良くなければ、今のような低級妖怪にすら喰われてしまうのが落ちだというのに……あまつさえ、逆に殺すなんて聞いたこともない」
呆れたようにも、怪しんでいるようにも聞こえる声色で言う。
「俺は間違いなく、外生まれの外育ちだよ。
半人半霊であることと魂魄流剣術を修めてる事を除けば、そこらの人間と変わらない」
「魂魄の剣術か……
そうだ、そういえばお前の名はなんと言うんだ?私は上白沢慧音と言う。助けて貰った礼がしたいから、ぜひ教えて欲しい」
「ん?あぁ、自己紹介がまだだったな。俺は――」
「俺は、魂魄妖魔だ。よろしくな、慧音」
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