初めてのアプローチ

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休憩に入るタイミングはだいたい大矢野マネージャーが指示してくる。 『そろそろ遅番メンバーは休憩やなぁ。 まずは…ゆみ、休憩に行ってこい。』 『はぁ~い。』 ファーストフード店はどこもそうなのかもしれないが、レジの台を使って入退店や休憩の開始・終了などの勤怠を管理する。 私もそれに従い、レジに自分のコード等を打ち込み、休憩開始の操作をしていると、 『あと、高ちゃんもついでに休憩行ってこい。』 しれ~っと、マネージャーが高木君に声をかける。マネージャーの意図がわかる私は、その彼の行動が露骨過ぎる気がして、慌ててマネージャーの方にかけより、小声で耳打ちをする。 『ち、ちょっと…大山マネージャー、なんか私の気持ち、バレバレっちゃないと?』 『何言っと~と?このくらいでバレることないって。 っていうか、ゆみ、頑張ってこいよ!チャンス作ってやってんだから(笑)』 親分肌だけど繊細さには欠ける大矢野マネージャーの押しに焦りながら、とりあえず高木くんと一緒に休憩室に向かう。 《もう!もしバレて、その結果振られたらマネージャーを恨んでやる!》 なんて思いながら、ドキドキする気持ちを一生懸命押さえ込む。
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