ある冬の日

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それから数日たったある日、短大のカフェテリアで温かいココアを飲んでると友達の由紀子ちゃんが話を振ってきた。 『この前さぁ、グッチにご馳走になったの。それでさぁ、お礼をしたいんだけど、何がいいかなぁ?』 グッチとは溝口さんという大学4回生の人で由紀子ちゃんのバイト先の先輩。彼女の話によると、なかなかかっこいいみたい。でも、カッコいいことを自負してる印象を受けていたから、私はあんまり賛成はできなかった。 『例の人? なんか軟派っぽいイメージがあるんだけどなぁ。』 『そんなことないよぉ。 ねぇ、何買ったらいいか、一緒に選んでよ。』 『う~ん。それなら、私バイトがあるから17時まででいいなら付き合うよ。』 食事のお礼って、いい心遣いだけど、なんか彼には軽いイメージを抱いてるから『そこまでしなくても…』なんて思いもある。 でも、グッチの話をしてる由紀子ちゃんは幸せそうで…。 私もいつか誰かのことをそんなに幸せそうに語れることがあるのかな…なんて考えながら、ショッピングの段取りを決めた。
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