79人が本棚に入れています
本棚に追加
バックヤードから別の男の子が出てきた。
スラリとしたスタイルに切れ長で涼しげな、でも優しそうな瞳の男の子。
一瞬だけど、本当に時が止まった気がした。
一目惚れってしたことないけど、こういう気持ちがそうなのかな?
そんなことを思ってると、由紀子ちゃんもオーダーを済ませ、私の向かいの席についた。
『お待たせ~。ごめんね、ちょっと話込んじゃって。』
『えっ?あぁ、いいよ。』
『ゆみちゃん、どうしたの?ボォ~としてたけど…。
あっ、見た?うちの男の子達。イケメンでしょ?』
『う、うん。そうだね。』
なんだか返答にドキマギしてたら、やっぱり勘づかれた。
『あっ!もしかしてゆみちゃんのタイプがいた?』
軽く聞かれただけなのに、私の心臓はバクバクして、耳まで赤くなりそうだった。
『…えっ!?
あっ、タイプとか…そんなんじゃないっちゃけど…
まぁ、あのドリンクのとこに立ってる人、カッコいいなって…』
『あぁ、〇〇くんね。かっこいいやろ?クールだけど、優しいし。ゆみちゃん、うちでバイトしたら?』
『え…え~っ!いや、そう意味じゃなくて』
由紀子ちゃんが言ってることは大したことではないのに、めちゃテンパって答えてしまう。
『あっ、私、夜間の専門学校も行こうと思うから、週に3~4日しか働けないし…』
『週3日シフトに入れるなら大丈夫だよ!今、バイト募集もしてるから、私からマネージャーに言ってあげるよ?』
一見、おっとりしたお嬢様の由紀子。でも、今日は頼もしいお姉様に見えた。
『週3くらいでいいなら、お願いしようかな?』
本当は週3でも可能だからという条件なんて、どうでもよかった。ちょっとした照れ隠しだったと思う。
『じゃあ、マネージャーに明日伝えとくね。』
由紀子ちゃんの声をどこか遠くで聞いてた感じで、私はまたあの男の子を目で追っていた。
最初のコメントを投稿しよう!