プロローグⅠ

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「次は風羽(かぜはね)、風羽(かぜはね)です…」 眠そうなアナウンス。 ゆっくりと減速していく列車。 一両編成の気動車の外に出てみれば、そこには真夏の日差しと空気が待っていた。 「…くそあちぃ」 愚痴ってみても何にもならないが、そう愚痴るしかない。 背後で、ディーゼルカーの扉が閉まる。冷気だけを満載した、がらんどうの列車が遠ざかっていく。 後に残されたのは、待合室だけの小さな駅と、そこに佇む一人の青年と。 そして、真夏の日差しと、セミのやかましい合唱だけであった。 空を振り仰ぐ。 青い空。入道雲だけが、出来損ないのアイスクリームのように白を広げていた。 行くか。 修一は歩き出す。 集落までは徒歩二十分。 それでも、俺はここに帰って来た――― あの日の約束を果たすために――― image=459686621.jpg
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