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「まさか、知り合いとはね。」
「ええ、そのまさかですよ。」
今度はピーナッツに手をつけようとしましたが、途中でグラスの方へ手を戻してグラスを持ちました。
残りのビールを全部飲み干そうと思い、ゴクンゴクンと飲んでいると、
「好きだったんでしょう?」
突拍子もないマスターの一言に思わず口に含んだビールを噴出しそうになりました。
「ゴホゴホッ!」
吹き出すのをなんとかこらえたものの、勢いよく喉に流れたビールが苦しくなり、胸を押さえ、口元からこぼれたビールをおしぼりで押さえました。
「な、何を言うんですか?!」
胸を撫で下ろし、空いたグラスをマスターの前に突き出しました。
「大のジョッキでおかわり!」
無表情のまま鋭い目つきで言いました。
マスターはニコニコしながら大のジョッキにビールを注ぎ私の前に置きました。
火がついたように半分ほどまた一気飲みをしました。
「ぐは~。」
「おじさんみたいだよ?」
「何とでも言って下さい。」
ちらっと横目で私を見た後、マスターはタバコに火をつけました。
私は何も話さないまま2杯、3杯を飲み干していきました。
何も言わなくてもマスターは4杯目のビールを出してくれました。
だんだん気分がよくなっていきます。
それに気付いたマスターが私の隣の椅子に座りました。
「確か、チャンミンて言ったんだっけ?」
「はい。昔、隣の家に住んでて、お隣同志でお友達みたいな感じでした。」
勝手に言葉数が増えます。
「そう言ってたね。で、再会したわけだ?」
マスターは興味深々に色々と聞いてきました。
「そうなんですよ。」
私は大のジョッキを左手に持ったまま、右手で髪の毛をくしゃくしゃとかきあげました。
「まさか、ここで会うなんて思ってなくて、すごくびっくりして、声かけたらあの態度ですよ。小さい時はお姉ちゃん、お姉ちゃんて懐いてたくせに。」
私は酔うとペラペラと話してしまうという悪い癖があります。
言葉が止まらなくなりました。本当に悪い癖です。
「すっかり大人になってて、驚きましたね。ま、テレビでちょくちょく見るようになって、あれ?なんて思って・・・。こんなに大きくなって、立派になってすごいなって。でも、むこうは私が中学の時に引っ越しちゃったし、連絡しようがないし・・・。」
左手のビールを一口含み、ジョッキをカウンターに戻しました。
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