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彼が嫌われる理由。
ようやく本家にたどり着いたが、軽く手当てをしただけで、ろくに眠れないまま月代の元へと参上しなければいけないことになった。少年が昨夜の傷の痛みに絶えながら歩いていると長く黒い髪を腰まで伸ばした少女が後ろから声をかけてくる。
「錬さま、昨日のことを聞かせていただきました」
「ああ……何の用?」
これから出るであろうことを想像して顔をしかめさせながら聞く。
「あらずいぶんな態度をとりますのね、私、昨日の件でずいぶん恥ずかしい思いをしましたのよ……わかっておりますの?」
「何で……日輪が恥ずかしくなるんだよ」
言った瞬間失言だと気づいたのか錬がしまったという顔をしたが、日輪は瞳を大きく見開き、細く形の良い眉を吊り上げて大きな声を出す。
「何でですって?大変不本意ではありますが錬様と日輪は許婚なのですよ?錬様が何か失態をすれば私……引いては有藤家の名に傷がつくのです。それを決して忘れないでいてもらいたいですね」
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