参落の最期。

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しばらく住み続けていた山を走り続け、彼は人間が作った道路と呼ばれる道に降り立つ。 山の中では走りづらい、人間では追いつけぬだろうが、それでもあいつらなら何かしらやってくるかもしれん。  ならばいっそのこと、この人間が作った道を走り抜けたほうがいい。 硬い地面が心地よく足の踏ん張りを助け、木々や石、他の動物達が跋扈している山の中と比べれば数段は早く走れる。 あいつらが来る前にこの山から走り去らないと……自分は……. ぶるっと身震いして全身の筋肉を縮こませて一気に走り出す。   油断は出来ない、もっと速く……できるだけ速く……じゃないと、あいつらが……。  途端、前足が爆ぜた。 不恰好の姿でアスファルトの上を滑っていく。  硬い地面に削られて擦りむいた傷が身体中に出来た。  何故自分の足が……? 彼の前足はまるで獰猛な獣に食いちぎられたかのように無くなっていた。 そこで彼は思い出したのだった。
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