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「それじゃぁ、とりあえず2人で軽く試合やって。俺、見てるからさ」
高山部長に言われ、竹刀を構え高津戸に向き合った。
俺は、何をやってるんだろうか。今の段階じゃぁ竹刀は、試合で通用するほどに振れないのに。
負けるって分かっているのにな。
「始めッ!」
高山部長の合図で、試合開始。
パシーーンッ…………
高津戸が俺の竹刀を叩いた瞬間軽い音が響いた。
それとともに、俺の竹刀はカシャーンと音を立てて床へ落ちた。
耳をふさぎたくなる音だ。
竹刀が床に落ちた時点で反則だ。
「えっ……園城寺、反則!」
その後も竹刀を落とし、結局反則負けした。
試合の間、すごく苦しかった。本当にもう駄目だと思った。
防具で顔が見えづらくてよかった。きっと試合中俺は、泣きそうな顔だっただろうから。
「園城寺、お前手ぇなんかしたのか?」
試合が終わり、高山部長に聞かれた。
「何もありませんよ」
下を向き、歯をグッと噛み締めた。ただこの現実を自分の口で、言いたくないだけだ。
「ありがとうございました。俺は、帰ります」
軽くお辞儀をして、逃げるように練習場から出た。
高津戸は、先輩たちと仲良く話していた。気に入られたのだろうな。
あいつは、強い。中学でも相当な選手だったんだろう。竹刀を振ったのを見ただけでわかる。
『あいつ本当に経験者か?』
帰り際に俺に対する先輩たちのそんな声が聞こえた。
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