【Ⅰ】転校生

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ゴンさんは黒板に名前を書き終えると黒田に自己紹介をするように言った。 黒田は一歩前に出た。 「黒田奈々と言います。これからよろしくお願いします。」 静かな口調で何の捻りもない挨拶をして頭を下げた。 「じゃあ黒田の席はあそこな。」 と言ってゴンさんが指差したのは俺の斜め後ろ、瑞穂の右側の席だった。 黒田は「はい。」と言って自分の席に向かう。 黒田が俺の席のわきを通ったとき、一瞬目があった。 だが、何も言わず黒田はただ微笑むだけだった。 ただの微笑みではない。 俺の背筋になにかゾクッと寒気のようなものが走った…ような気がする。 それが何なのかは分からない。 今日出会ったばかりの転校生にそんな感情が生まれるはずがない。
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