奈落の招待客

【Ⅰ】転校生

その後は特にそのことについては考えなかった。

考えなかったというよりは完全に忘れていた。

全校生が体育館へ移動し、始業式が始まる。

長い校長の話はきっと誰も聞いていないんだろうなと思いながらぼーっとただ校長の話を話としてではなく、ただの音として享受する。

その後もいろんな先生がだらだらと話していた気がするけど覚えていない。

そんなこんなで始業式が終わった。

教室に戻ると黒田はすっかり人気者になっていた。

これも漫画でよく見る光景だ。

黒田の机に皆群がっている。

なんで転校生は必ず初日に人気者になるのだろう。

俺はその人混みに混ざることはなく、自分の席に着いてただ外を見ていた。

さすがにこの距離だと聞く気がなくても斜め後ろの会話が聞こえてきてしまう。