手紙

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影が見えた。 黒い、人のような影。 霊的なモノを見たことのない私は、その影を見たまま固まった。 だけど、私の霊的なモノを見ての体の硬直は、直ぐに無くなった。 その影に足があるのが見えた。 瞬間、私は目を見開き、近くにあった、リビングの隅にインテリアとして父親が置いているゴルフバックの中からクラブを手に取ってその影に構える。 『だっだだだだ誰!!いつはいったのよ!!』 私がかな切り声叫ぶと、ドアの前に立っていた影がゆっくりと歩き、近づいてきた。 近づくにつれ、私の人だという確信は確かなものとなり、 影と思ったそれが、全身黒い衣を纏っているものだと気づいた。 顔はフードで見えないが、隠れきれていない口元の輪郭は見ることができた。 薄暗い部屋の中でも目立つ白い肌と、それを際立たせている赤い唇。 その赤い唇が血のように思えて、私は顔を引きつらせた。 『ち、近づくな!!警察呼ぶわよ!!』 クラブを持つ両手を震えさせ、私はその黒い衣の人物に再び叫ぶ。 そしてその私の声に、黒い衣の人物はすんなりと止まった。 私が少し怖じ気づいていると、黒い衣の人物の赤い唇が動く。 『……恐がるな。別に取って食おうってんじゃない』 黒い衣の人物のその声を聞いて、私は更に震えさせる両手を震えさせた。 男の声。
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