手紙

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男が何かを口走り、私はよく聞き取れず眉を曲げた。 その時、 男のいる後ろの空間がうねうねと歪み始めた。 うねる中心がその空間にあったガラスのドアの形を変え、横に伸ばすようにして黒い楕円を作っていく。 それはやがて黒い穴になり、ぽっかりとうねる中心に空いた。 『何それ…』 『さぁ、入れ』 空いた穴と男の言葉に、私は苦笑いすると、表情を真っ青にさせ、勢いよく身を翻した。 男のいる逆方向に走り、庭の方へと向かう。 『え…?』 向かおうとしたのだが、進めなかった。 後ろを振り返ると、いつも見ていたフカフカのソファーやテレビは無く、見覚えのない燃え上がる炎の壁が行く手を阻んでいた。 『なに…』 『往生際の悪いガキだ』 背後から聞こえた声にビクつき、再び振り返ろうとした刹那。 首に衝撃を感じ、何も見えなくなった。
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