6人が本棚に入れています
本棚に追加
男が何かを口走り、私はよく聞き取れず眉を曲げた。
その時、
男のいる後ろの空間がうねうねと歪み始めた。
うねる中心がその空間にあったガラスのドアの形を変え、横に伸ばすようにして黒い楕円を作っていく。
それはやがて黒い穴になり、ぽっかりとうねる中心に空いた。
『何それ…』
『さぁ、入れ』
空いた穴と男の言葉に、私は苦笑いすると、表情を真っ青にさせ、勢いよく身を翻した。
男のいる逆方向に走り、庭の方へと向かう。
『え…?』
向かおうとしたのだが、進めなかった。
後ろを振り返ると、いつも見ていたフカフカのソファーやテレビは無く、見覚えのない燃え上がる炎の壁が行く手を阻んでいた。
『なに…』
『往生際の悪いガキだ』
背後から聞こえた声にビクつき、再び振り返ろうとした刹那。
首に衝撃を感じ、何も見えなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!