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直ぐ様私は鉄柵にしがみつき、ドアの方に向かって目一杯腕を伸ばした。
私の入っている牢屋と、鍵のかけられた壁との距離は五メートルは優にあり、当然、私が手を伸ばす位でとどくはずもなかった。
それでも、私は鉄柵の間に腕を入れ、肩をめり込ませ腕を伸ばした。
絶対取ってやる。
ガチャッ
目の前のドアのノブが回る音。
鍵の掛かる壁に視線を集中させていた私は、ビクッと肩を震わせた。
回ったノブがそれ以上回らなくなり、とうとう閉まっていたドア自体が動き出す。
入ってきたのは、やはりあの男だった。
金色の瞳の、異様な美しい容姿の男。
金色の瞳の男は、鉄柵から腕を伸ばす私をしばらく見て、私の手を伸ばす方を見ると、鼻で笑った。
『よもや届くと思ったワケではあるまい?お前の腕の倍以上もあるこの距離を、届くと思ったのなら、相当頭がやられているぞ』
金色の瞳の男はそう言うと、ドアの横の壁に掛けてあった鍵を見せつけるようにして手に取った。
『残念だったな?後少しで取れたものを』
その金色の瞳の男のバカにした全てに、私は目を鋭くさせて、伸ばしていた腕を下ろす。
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