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少女の家は、決して裕福ではなかったが、少女を甘やかす位のお金は十分あった。
広くもなく、狭くもない普通の一軒家が、少女の家。
その家のドアが今回り、学校から帰った少女が帰ってきた。
少女の後ろには母親と、ワゴンタイプの車が見える。
少女は外に出るときは勿論、学校へ行くとき、学校内外でさえ、1人は許されなかった。
異常な程の愛情。
だがこれは、少女にとってやり過ぎとも言い切れなかった。
少女にとって、異常な程の過保護は、少女の身を守る事に直接繋がっているのだから。
『また来てるわ…誰なのこんなに。どうやって家を調べたのかしら』
家の周りを囲む塀。
その入口付近に付けられた郵便受けの中に、外に溢れ落ちる程の何百通もの手紙が入っていた。
勿論、全部少女宛の恋文。
『毎日毎日、…本当に呆れるわ。ねぇ?』
家の中に入る少女を見つめながら、少女の母親は玄関の鍵を厳重に閉めた。
鍵の数はおよそ八個。
扉の上には赤外線スコープも見える。
少女は鍵を閉める母親に曖昧な返事を返しながら、冷蔵庫の中に入っている缶ビールに手をかけた。
『コラッ、昼間からやめなさい。いい女子高生が何ですか』
追いかけるようにしてリビングに入ってきた母親が、それを止める。
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