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少女は頬を膨らませながら、缶ビールの隣にあったオレンジジュースを手に取り、リビングに置いてあるフカフカのソファーに寝転がった。
『今ご飯作るからね』
『うん』
母親に返しながら、少女はテーブルの上に置いてある何百通もある自分宛の恋文に目をやった。
ヒョイッと一通手に取り、中身を取り出す。
少女は真剣に並ぶ恋の文字達を見て笑うのが日課だった。
スキあらばと狙っている下心がすぐにわかる。
少女にとって、男という生き物は、父親以下、人以下。
男なんて最低の生き物だと、手紙を読んでつねづね頷かされる。
手紙の封を破り、笑いながら恋の文字達を見ていく。
『ずっと…前から好きでした…あははっ。写真まで入ってる。必死』
涙が出るほど笑い上げながら、少女は次の手紙に手を伸ばす。
『ん?』
他の手紙との手触りの違いに、思わず声を洩らした。
少し顔を上げ、掴んでいる手紙に目をやる。
それは明らかに他のデパートに売ってありそうな紙質の封筒ではなく、牛皮を折って作られたような、手の込んだ手紙だった。
封をするのにもノリで張り付けるのではなく、焼き印。
少女は寝転がっていた体を起こし、キチンと座ると、その手紙をまじまじと見つめた。
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