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(ー…どこかの大金持ちだったりして。
こんな高価そうなモノ、見たことないもん。)
少女は何だか気持ちが弾みながら、焼き印で止めてある手紙の封を開いた。
四折りにしてある牛皮をゆっくりと開いて中に書いてある文字を見つめる。
(どんな言葉で、私を唆そうとしているんだろうか。)
が、輝くような目で文字を見ていた少女は、その目を徐々に細めていった。
『…ま…おう…が…
あなたさまを…ご指名、されました…直々に…お迎えにあがります…場所は…』
そこまで読み上げた少女は、眉を下げ、苦いものを食べた時のような表情をした。
『いたずら…』
キチンと座っていた体を後ろに倒し、持っていた手紙を放り投げる。
弾ませていた気持ちをガクッと落とし、再びソファーに寝転がった。
残りの手紙を読んで笑う気力はもう無かった。
『出来たわよーっ、』
そう、ソファーに寝転がっている少女に、弾む声をかけた少女の母親だったが、散らばる手紙が目に入って、口をムッと尖らせた。
『もう、散らかしてー』
床に散らばっている手紙を一つ一つ拾い上げ、恋の文字達に怪訝そうに眉を潜める。
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