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「……あんたら何やってんの?」
21世紀の現代。
いくら銃刀法があり戦争放棄を謳っている日本とはいえ、だからと言って、平和かと言うとそうでもなかったりする。
早速、目の前で強引なナンパを発見。
当然、私は正義の味方なんかじゃない。
本当ならば素通りといきたい所なのだけれど。
今回は──
いや。
今回も、そういう訳にはいかないらしい。
そのヒョロっこいチャラ男の腕を背後から掴めば、「あん?」と威嚇しながら細い目が私を見下ろした。
「チカちゃん!」
私の妹は、今日も元気に厄介事に巻き込まれている。
「……千晶、帰るよ」
「うん!」
さっきまで小動物みたいにブルブル震えていたくせに、私が来た途端にコレだ。
相変わらず全身全霊で信頼してくれている千晶に、私はぎこちなくも笑顔を浮かべた。
もう一度言う。
私は正義の味方なんかじゃない。
千晶が全身全霊で信頼してくれているのならば。
私は、全身全霊を懸けて千晶を。
ただ、大切で大好きな妹を護りたいと思う。
二人の母を悲しませた父への当て付けか。
顔も知らない実母への疑念か。
本来ならば憎むべき私を、惜しみない愛情で育ててくれた母さんへの感謝の想いか。
それとも、愛人の子として生まれて来てしまった事への懺悔なのかは分からないけれど。
「怪我してない? 千晶」
「うん。チカちゃんが助けてくれたから大丈夫だよ」
私は、千晶の盾となり矛となる。
まるで、身命を賭して姫君を護るナイトのように。
昔からそうだった。
少しだけ鈍い、大人しい千晶を護るのが私の役目。
きっと、ずっと変わらない。
ピクリとも動かなくなったチャラ男達を冷めた目で一瞥して、私は身を翻した。
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