プロローグ

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「はい。 大丈夫です。 わかってます。 お盆明けにこちらを出ますので」 こんな遅くに上司からの電話なんてやってられない。 「はい。 えぇ。 では、失礼します」 長く、めんどくさい上司の電話はやっと終わった。 机の上に無造作に置いた資料と取材メモをカバンの中に放り込んでふと時計を見ると午前0時を過ぎていた。 「私だって遊んでるわけじゃないっての…」 私は「佐倉京香」関東圏内で一大勢力を誇る新聞社に勤務する記者 で、今回はもう1人相棒の 「佐倉さーん。 ここ売って無いッスよ」 入社が同期の「植田幸介」ちなみにカメラマン 「えー…売ってないの? 最悪…」 空になってしまった「KENT100s」 カチッカチッとライターをつけるもタバコが無いのでもどかしい。 「じゃあ僕の吸います?」 と、ジーンズのポケットから「Malboro」を差し出してくる はっきり言ってあれはマズイからいちばん嫌い。 「植田君ごめん…私はそれ吸わないの」 「えー!? そうなんスか?」 「だって、不味くって…」 「ならしかたないッスね」 と、嬉しそうに目の前でタバコを咥えるとその先に火をつけて涼しい顔でふかし始めた。 「それ…私への嫌がらせかしら? ウエダクン」 「えっ。 そんな訳無いッスよ」 「もう…明日は覚えてなさい!!」 放り投げたカバンからボイスレコーダーと新しい取材メモを取り出して見せるとあからさまに嫌な顔をされた。 私達がここ「篠ヶ月村」へ訪れたのは都市伝説とまでされた「失踪事件」について調べに来ているから。 2,3日前から取材をしているものの確信めいたものが何1つ手に入らなくて手をこまねいていたところだった。 すると、外で珍しく車のエンジン音が聞こえてきた。 「誰か来たみたいッスね」 「こんな時間になんて東京の人かしら」 私達は取材の事ばかりで恐ろしい事に首を突っ込んでいたとは気がつかなかった…。
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