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宵待ち月 (1/5)
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店の軒先に提灯(ちょうちん)の灯りがともり、宵闇が深い闇に変わる頃、この街は最もきらびやかな姿を浮かび上がらせる。
夜見世の女たちの呼び声、そこかしこの座敷から上がる馬鹿騒ぎの奇声に嬌声。
窓の外を眺めながら酒をちびりと舐めていた男は、拳(こぶし)一つ空けた距離で酌をする女に問いかけた。
「なぁ……鬼ってぇのはなんだ?」
「また随分と突飛なたずね事ですこと……そうねぇ……鬼とは幻。人々が作り上げた想像の産物。人を殺め生き血をすすり、極悪非道で冷血な化け物のこと……かしらね」
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