宵待ち月

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.  差し出された猪口に酒を注ぎながら、女はそう答えた。  酒を注がれた猪口に移り込む月の影を男はしばし眺め、一思いに飲み干した。 「――なりてぇよ……」 男は空になった猪口(ちょこ)を右手にぶら下げたまま、街の灯りに霞(かす)む見事な満月を仰いだ。 「俺ァ………あの人の為なら、身も心も骨の随まで鬼になりてぇよ―――」  《宵待ち月―完―》
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