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病院で初めての
私は病院で初めて雪を見た。
朝、時間になると看護師さんが病室のカーテンを明けに来る。
その日はその行動を何となく見ていた。
カーテンが空いた瞬間、眩しい光が差し込んできた外を見ると雪が降っていました。
毎年雪が降ると病院にいた頃を思い出します。
そしてもうひとつの初めて。
同じ病院内の別の個室の部屋へ看護婦さんにくっついて行ったときのこと。
その部屋には高校生くらいの男の人がいました。
その男性は頭にバンダナをつけていたので、恐らくガンかなにかで抗がん剤を投与し、その副作用で髪が抜けていたのだと思います。
なぜその人と仲良くなったのかは忘れてしまいましたが、たまに皆で話をしたりしました。
名前も知らないその彼はあまり笑ったりしない大人しい、というか背の高いどこか大人びた感じの人でした。
ある日、私と親友(16ページ参照 )と看護婦さんとで彼を笑わせてみようということになり彼の病室へ行き、彼を笑わせることができたときがありました。
彼は筋力が落ちていたせいか
『腹が痛いからやめろ』
と言いましたが決して怒っているわけではありませんでした。
笑いを我慢できずにお腹を押さえて控えめに笑うその彼を見て、幼いながら少し特別な感情が湧いていたことに気がつきましたが、その時はわかりませんでした。
今思えばそれは、恋、だったのかなぁと思う。
それが私の初恋。
彼が今どこで何をしているのかわかりませんが、一緒に笑ったあの日のことを今も覚えていてくれたらいいなぁと思います。
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