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「お待たせしましたー」
「おっそい!何してたんだよ!」
待ち合わせ場所である駅の改札口では、すでに友人である凪紗が立っていた。
15分近く遅刻してしまったためか、苛立っている。
「ご、ごめん。寒くてなかなか家から出られんかった」
「理由がマヌケすぎる!」
「これだから東北の冬は嫌いだー。凪がなんとかしてよ」
青森県ほどは降らないが、それでも秋田県はそれなりの積雪量を誇っていた。
寒さの苦手な真琴にとっては、迷惑でしかない。
「私に頼るな。さぁ本屋行くよ!」
「了解です」
寒い中でも元気な凪紗とは正反対に、真琴は寒さが大嫌いだった。
やる気のない返事を返して、本屋に直行する。
積もったばかりの新雪を、お気に入りのブーツでサクサクと踏む。
綺麗な足跡が、真琴の後ろに続いた。
「っ!?」
ゾワリと、寒気が背筋を駆けた。
慌てて振り返るが、辺りは疎らに人がいるだけで、寒気の原因となりそうなものはない。
寒気の感覚は、朝に感じた胸の違和感に似ていた。
「おーい真琴ー!置いてくぞー!」
「……あ、ごめん今行く!」
いつの間にか遠くに行ってしまっている凪紗を追って駆け出す。
きっとこの寒気は、東北の気候のせいに違いない。
そう自身に言い聞かせた。
――本屋を目指す2人を付ける影が1つ
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