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ドアノブが動いた。
しかし、ピタリと音が止む。
――ガチャッガチャッ
まるで、扉が開かないのを確認しているようだった。
(中に人が入っている個室を確認してる……?)
一体何のために?
――ガンッ
「……ぇ!!」
――ガンッガンッ!!
強い力で扉が叩かれる。
まるで、ここを開けろと訴えているかのように。
(ど、どうしよう!凪に……凪に連絡)
携帯電話を使おうにも、扉に付いているフックにかけた鞄に入っている。
未だ大きく軋む扉は悲鳴を上げ、今にも破れそうだ。
鞄を取ろうと立ち上がった途端に、扉が開いたらどうしようと思うと、体が動かない。
――ドンッドンッ
今度は蹴るような音。
ミシミシと音を立てて、扉が歪む。
もう破られるのも時間の問題だ。
「い、嫌……なんでこんな!」
懐かしくも感じられる嫌悪感と恐怖。
逃れられない絶望。
バキンと鍵が壊れる音。
ゆっくりと、扉が開かれる。
まるでスローモーションのように感じられた。
その瞬間は一瞬のようで、永遠のようにも感じられる。
出来ることなら、永遠に来なければいい。
時間など流れなければ。
『お久しぶりでございます。マコト様』
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